居抜き物件・居抜き売却とは
居抜き物件のメリットとリスク
居抜き物件は、内装や調理設備、什器などを撤去せずに、そのまま次のオーナー・借主に引き渡す物件のことを指します。
居抜き物件はスケルトン物件と異なり、設備投資や工事費を大きく抑えられるメリットがあります。特に飲食店や美容室など、設備の初期費用がかさむ業態で人気があります。
一方、設備の故障や清掃不足などがあると、受け取った新オーナーとの間で設備トラブルが発生しやすいリスクも抱えています。加えて、家主の承諾が必須となるケースもあり、売買を進めるには契約内容をしっかり確認して進めることが大切です。
居抜き売却の仕組み
居抜き売却は、賃貸借契約の期間中に、借主が内装や設備、什器などを撤去せずに次の借主に譲渡し、退去する方法のことを指します。
この売却方法は、設備や内装一式を次のオーナーに譲渡する「造作譲渡」と呼ばれる契約方式が一般的です。造作譲渡を行うことで、売主(現テナント)は原状回復費用(スケルトン状態に戻すための費用)を削減でき、買主(新テナント)は初期費用を抑えてすぐに開業できるというメリットがあります。
売買を円滑に進めるためには、内装や什器の状態を正確に把握し、売主と買主双方が納得のいく条件を設定することが重要です。その際には、造作譲渡契約書の雛型やテンプレートを活用し、譲渡品リストの状態を明確に確認しましょう。
居抜き物件のトラブルが発生しやすい3つのタイミング
居抜き物件は、手軽に出店や引き継ぎができる反面、特定の工程がトラブルを引き起こしやすいポイントになります。
居抜き売却を進める際には、家主への事前の相談や設備の譲渡契約など、いくつかの重要なステップがあります。これらをスキップしたり不明瞭なまま進めたりすると、後日大きな火種となる可能性が高いです。特に、契約書の取り交わしや譲渡品リストの作成は多くのトラブルを予防する要になるため、時間をかけて内容を精査することをおすすめします。
- 1. 家主(貸主)への確認のタイミング
- 2. 造作譲渡契約の締結タイミング
- 3. 物件の引き渡しタイミング
1. 家主(貸主)への確認のタイミング
家主・貸主に無断で物件売却を進めると、契約違反や更新拒否といった深刻な問題を招きやすいです。必ず居抜き売却を検討する段階で家主に相談し、条件交渉と正式な承諾を得ましょう。
家主とのやり取りを円滑に進めるためには、具体的な売却譲渡内容や設備の状態などを明確に示すのが理想です。また、家主によっては「退去時に原状回復をしてほしい」と考えているケースもあるため、賃貸借契約の内容との相違を防ぐためにもファーストステップとしての確認は重要です。
2. 造作譲渡契約の締結タイミング
居抜き物件内の設備や什器を次のオーナーに譲るために行う「造作譲渡契約」では、譲渡範囲や設備の使用状況、修繕の必要性などをしっかり把握しなければ後々のトラブルにつながります。
故障している設備やリース契約が残っていないかといった点を入念に確認し、適切に書面化することが、売主買主双方のリスク軽減につながります。いくつかの設備がリース契約中である場合、契約の引き継ぎや解約について早めの段階から話し合いを行うことが望ましいです。
3. 物件の引き渡しタイミング
引き渡し前後における設備の動作確認を行わないと、「使ってみたら壊れていた」というクレームに発展するおそれがあります。特に、冷蔵庫やエアコン、空調設備、電気系統などはチェックが欠かせません。
引き渡し時には、リース品や不要品、廃棄物の処理状況についても明確にしておく必要があります。曖昧なまま進めると、後で誰が費用負担をするかでもめる原因となります。このタイミングで細かい点まで確認し、契約書にまとめ双方で合意しておくことが大切です。
居抜き物件の売却で多発する6つのトラブル事例
実際に多く発生しているトラブル事例を6つご紹介します。
これらの事例は、事前の書面化や動作確認、明確な責任分担で対応できる点が多いです。物件売却に関する書類や契約の内容を丁寧に確認することが何より大切になります。
- 【事例1】居抜き売却について貸主の承諾を得られない
- 【事例2】不良品・リース品だった設備を譲渡してしまった
- 【事例3】譲渡品がリストと異なる
- 【事例4】不要品を残したまま新テナントに引き渡してしまった
- 【事例5】新テナントへの引き渡し後の原状回復を確認していなかった
- 【事例6】新テナントへの引き渡し後に近隣からのクレームが来てしまった
次のセクションで、各トラブルに対する対策方法・予防策もご説明します。
トラブル事例別の具体的な対策と予防策
トラブルが起きた場合でも、事前に対策を準備しておけば被害を最小限にとどめられます。原因と対策を理解しておけば、いざという時の行動がスムーズになり、円満な物件の引き渡しにつながるでしょう。
【事例1】居抜き売却について貸主の承諾を得られない
まずは貸主と再度話し合い、売却の計画や内容を具体的に説明しましょう。貸主が懸念しているポイントを把握し、改装工事や原状回復に関する条件交渉で折り合える可能性があります。
それでも解決が難しい場合は、弁護士や不動産の専門家に相談し、賃貸借契約の解釈や交渉のサポートを得る方法もあります。トラブルの根幹が契約書の曖昧さにある場合は、その修正についても検討が必要です。両者が納得できる着地点を探すため、初動段階で細かい説明や合意形成を意識して交渉するようにしましょう。
【事例2】不良品・リース品だった設備を譲渡してしまった
引き渡し前に設備の動作確認を徹底し、正常かどうかをチェックすることが重要です。購入後に不具合が判明した場合、買主に対して説明義務違反や契約不履行と見なされるリスクがあります。
リース品・リース契約の場合は、契約の休止や解約、あるいは契約引き継ぎなどをきちんと確認しましょう。譲渡前にリース企業とも連絡を取り、手続きを円滑に進めておくことが大事です。設備の状態を確認する際は、その結果を写真や報告書などで証拠として残すと後から誤解を防げます。
「リース・レンタルの違い」に関して、「リースとレンタルの違いを解説!飲食店開業・移転におすすめなのはどっち?」でも詳しくご説明してます。
【事例3】譲渡品がリストと異なる
譲渡品リストは極力細かく作成し、どの設備が含まれるかを正確に示します。可能であればシリアルナンバーや型番などの情報も記載しましょう。
売買契約時にリストを簡易的に済ませてしまうと、後日「聞いていたものと違う」というクレームが生じやすいです。特に高額な設備については詳細な合意を得ておくことが欠かせません。引き渡し後にはリストと現物を照合し、売主買主双方でチェックを行うことでトラブルを防止できます。
【事例4】不要品を残したまま新テナントに引き渡してしまった
不要品や廃棄物の処理は誰の責任なのか、売却前に明確に取り決めしておくことが欠かせません。曖昧なままだと、処理費用や手間をどちらが負担するかで揉める原因になります。
業者へ委託しての廃棄処分を予定している場合は、その費用やスケジュールも明文化しておきましょう。契約書に細かく盛り込むことで後々のもめ事を避けられます。大型の調理機器などは運搬や処理費用が高額になるケースもあるため、早め早めに確認と対応を心がけましょう。
【事例5】引き渡し後の新テナントでの原状回復を確認していなかった
原状回復義務に関しては、物件契約と合わせて細かく取り決めておくことが重要です。居抜きで内装を残す場合でも、解約時にどの程度まで回復を行うかの基準が曖昧だと、後からトラブルになります。
契約書に「退去時の現状復帰レベル」を明記し、オーナー同士や家主とも合意を得ることで、将来的な問題を最小限に抑えられます。また、新オーナーが設備を追加した場合の処理方法なども契約時に決めておくと、さらに安心です。
【事例6】新テナントへの引き渡し後に近隣からクレームが来てしまった
飲食店など騒音や臭いが問題になりやすい業種の場合、近隣環境や近隣住民対策を売却前に共有しておくと、新オーナーも適切な防音対策や排気設備を準備しやすくなります。
クレームが発生した場合にどのような対応を取るか、責任の分担や連絡手段を事前に決めておくことで、大きなトラブルに発展しにくくなります。また、売主がすでに過去に近隣クレームを受けていた場合、その対応履歴や改善策をしっかり伝えておくと、新オーナーが同じリスクに直面した際の助けとなるでしょう。
居抜き売却でトラブルを防ぐ重要ポイント3つ
居抜き物件の売却には、造作譲渡の知識や家主との交渉など幅広いスキルが求められます。契約成立後に買主から指摘を受けたり、交渉が長期化したりするリスクを避けるため、「事前対策」「情報共有」「専門業者への相談」の3つのポイントを徹底しましょう。
契約と相場を把握する「事前対策」
居抜き売却をスムーズに進めるには、計画的な準備が不可欠です。特に、賃貸借契約と売却価格について事前に対策を練ることが重要です。
まず、家主や管理会社へ居抜き売却が可能か、賃貸借契約の内容に基づき事前に確認します。もし契約で許可がない場合、家主との交渉が必要です。この取り決めは、後々のトラブルを避けるため書面で明確にしておきましょう。
また、査定や売却金額の設定は、専門家を通じて相場感を掴むことをおすすめします。市場に合わない価格設定は、買主との交渉が長期化するケースにつながります。居抜き物件の市場価格を正確に把握することが、売却成功の鍵となります。
契約後のトラブルを防ぐための「情報共有」
居抜き売却のトラブル事例は、情報不足から生じます。契約後のクレームを防ぐため、買主との正確な情報共有を徹底しましょう。
まず、厨房設備や内装の造作物など譲渡品リストを作成し、契約書に含めることが必須です。設備の状態やリース品の有無は、曖昧にせず正直に伝えてください。特にリース契約が残っていると、トラブルの原因になりやすくなります。
水回りの不具合など、売主だけが知る隠れた欠陥(瑕疵)があれば、必ず事前に買主に開示してください。これにより、法的な対策となり、契約不適合責任のリスクを軽減できます。造作譲渡契約書の専門用語は、分かりやすい表現に言い換え、丁寧に伝えることが誤解を防ぐポイントです。確実な情報共有が取引の成功です。
複雑な手続きを任せる「専門業者への相談」
居抜き物件の売却は専門知識が必要であり、トラブルを回避できない場合があります。専門業者への相談は、円滑な売却への近道です。
専門業者は、造作譲渡の知識から家主との交渉まで幅広く精通しています。トラブル事例やその対策方法にも詳しいため、手続きを円滑に進めやすくなります。特に、退去時の原状回復義務や廃棄物の処理など、費用に関わる問題は、事前に相談し明確にしておくことが大切です。
繁忙期や急ぎの売却時など、自力で対処が難しい場面は多いものです。実績とノウハウのある業者に問い合わせをすることで、スムーズな売買につなげられます。まずは自分の店舗が対象エリアか、費用や査定はどのように進めるかなど、気軽に情報収集から始めるのがおすすめです。
トラブルを回避して円滑に売却するなら「店舗買取り.com」
飲食店の造作譲渡は、内装や厨房機器などの専門的な知識が必要となるケースが多く見られます。「店舗買取り.com」では、貸主との交渉や設備評価に精通したスタッフがサポートを行い、スピーディーな買取と譲渡を実現してくれます。飲食店ならではのリース契約や衛生面の問題なども相談に乗ってもらえるため、安心して進められる点が大きな魅力です。
居抜き売却を相談する居抜き物件・居抜き売却に関するよくある質問
疑問点をしっかり解決してから売却の準備を進めることで、後々のトラブルを大幅に減らすことが可能です。
- 居抜き物件とスケルトン物件の主な違いは?
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居抜き物件は、内装や什器設備が残っており、通常はそのまま使用できます。一方、スケルトン物件は壁や天井、床以外の設備が撤去され、空っぽの状態になっているのが特徴です。
コストや準備期間の面で居抜き物件は有利ですが、設備の残存状況や劣化具合によっては始業後に修理コストがかさむリスクもあります。
「居抜き・スケルトン」に関して、「居抜き・スケルトンとは?飲食店開業・売却でのメリット・デメリットも解説」でも詳しくご説明してます。
- 居抜き売却のメリット・デメリットは?
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メリットは初期投資を大幅に削減できることや、営業開始までのリードタイムを短縮できることが挙げられます。また、前オーナーの売上実績を活用できる場合もあります。
デメリットは、設備や内装状態によっては買主との間でトラブルになるリスクがある点です。譲渡時に設備不具合が見つかったり、リース契約に残債があったりすると、契約をめぐる衝突が起こりやすくなります。
- 居抜き物件のトラブルが発生しやすいタイミングは?
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家主への確認や造作譲渡契約の締結、そして物件の引き渡し前後などが典型的にトラブルになりやすいポイントです。何か問題があるときは、これらのタイミングで確認を怠っていることが多いです。
【まとめ】居抜き売却・開業を成功させるには事前確認と専門家の活用を
最後まで気を抜かず、契約内容と設備状態をしっかり把握することが何より大切です。
最大のポイントは、「貸主の承諾」と「譲渡範囲の明確化」です。本記事で解説した注意点をしっかりと押さえ、時間に余裕を持って専門家(仲介業者)とも連携しながら進めることで、スムーズかつ安心できる取引を実現できます。居抜き物件の売却は、家主や買主、リース会社など多くのステークホルダーが関わるため、各方面との情報共有を丁寧に行う必要があります。曖昧な点が残った状態で話を進めると、後々の大きなトラブルへと発展しかねません。
もし自力での対応が難しい場合は、不動産業者や弁護士といった専門家に相談するのも一つの手段です。第三者の視点が加わることで、見落としがちなリスクを早期に発見できる可能性があります。
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